針仕事
商品番号  0023
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1830年代の物です。


これは、浮世絵ではありません。役者や美人、あるいは名所などを題材とする浮世絵とはまるで違う絵です。そして、この版画は、原画にあるおおまかな筆の持ち味を、できるだけ生かすように作ってあるのです。江戸時代には、こういった粗描を題材とした版画がたくさんあって、絵の手本にもなっていたのです。もちろん、版画の絵それ事体を楽しむ人たちもました。


ざらついた線がありますよね。この風合いを出すためには、すべて掠れ彫りの技術を使いました。筆が紙の上をこすっていくとき、まばらにできる墨の付かない部分の味わいをだすためです。これは、まず基本となる線を彫り残し、そこに彫刻刀で傷を付け、えぐったり切り取ったりするのです。これはなかなか手の混んだ作業で、随分と時間も掛かります。でも、彫り終えて摺ってみると、まるで筆で描いたように見えます。また、墨のとても薄い部分は、墨版で2回摺りました。最初はうんと薄い青墨を用い、その上からもう一度(それも部分的に)濃い墨で摺るのです。


友達でもある西洋人の版画家の中には、この私のやり方にとても批判的な人もいます。彼らが言うには、版画というものは版画らしく見えるべきで、肉筆画のコピーではない。木目が浮き出て見え、どんな道具で彫ったかも分かり、木の癖も生かすべきだ、というのです。でも、日本の伝統木版画というのは、そもそも再生産の手段であって芸術ではないのです。


摺物アルバムが先に進むにつれ、包みを開けるなり「こりゃ、なんじゃ!」と言いたくなるようなことがまたあるかも知れません。腑に落ちない点があれば、いつでも電話して確かめてください。私の手落ちということも往々にしてありますから。でも、私が苦労して出した持ち味かもしれませんよ。私には、まだまだ試してみたい技術がたくさんあるのですから。


先月私は、手許の道具を使いこなして祐信の絵を復刻しました。今月は、同じ道具を使って、まるで違う椿年の版画を復刻したのです。これは、日本の伝統木版画の強みで、いろいろな音色を奏でられるのです。



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