商品番号  0096
在庫  在庫あり
サイズ  15.50 x 11.00cm
3,240円
税別  3,000円

これは、おそらく1730年代の作品でしょう。絵師は西村重信、出版元は「いせや」となっています。着物にある大きな紋から判断して、役者はこのころ人気のあった荻野伊三郎です。どのような演目のどの場面を描写したのかは、様々な本を調べてみたのですが、なんの手がかりも得られません。私の想像するところでは、井戸の中に隠れていたこの人物が、突然姿を現して刀を抜き悪者を追い払う、という劇的な瞬間を捉えたものではないでしょうか。

この版画は、正確な意味での復刻とはなっていません。多色摺が行われるようになったのはずっと後のことで、このオリジナルは漆絵として制作されています。輪郭を作る墨の線は通常の木版で摺っていますが、色の部分は一枚ずつ筆を使って塗り、真っ黒な部分には光沢のある漆を塗っていました。

そこで私は、多色摺が使われるようになる数十年先まで時代を早めて、その手法を使うことにしたのです。実際に自分でやってみると、色版を用いるという技術が版画にどれほど進歩をもたらしたか、身をもって感じます。色塗りをする人達が並んで座り、墨線からはみ出さないように一枚一枚順繰りに色塗りの作業をする代わりに、摺師が次から次へと「大量生産」ができる。しかも、仕上がりはもっと精密です。