商品番号  0090
在庫  在庫あり
サイズ  23.00 x 13.80cm
7,560円
税別  7,000円

この摺物アルバムに、初めて20世紀の作品が加わります。これは吉田博のデザインで、彼自身が1939年に日本で出版した「Japanese Woodblock Printmaking」という英語の本の中に入っています。吉田氏の著作権は、もう切れていますから、このアルバムに加えることができるのです。彼は1950年の春に亡くなっていますから、2000年の大晦日、今からほんの数週間前に、生存中の作品の版権が消滅しました。


江戸時代の木版画を復刻するとき、私は他の人の作品を盗んでいるというような気持ちになることはまるでありません。何百年も経ってからでは、作品を「所有」している人はいなく、私たち皆が共有する文化遺産だからです。でも、このように最近亡くなられた人の作品は、法律上では復刻が許されていても、正直なところ、自分が入り込むべきでない所に侵入するような気がするのです。ですからこの版画には、ひとつ違うところを作りました。つまり、摺りに含まれている署名と落款を除いたのです。そこまで再生するのは妥当でないと思えたからです。(もうひとつ、記しておかなければならないことに、まかり間違っても雁作などと責めを負うことのないように、原作よりもひとまわり大きくしました。ですから、吉田作との違いは一目瞭然です。)


私は、吉田氏と御家族の方々には大変お世話になっております。彼は日本の木版画の技術が、単に保存されるだけに留まらず世界に広がることを望んでいました。彼は著書の中で、「日本固有の芸術が西洋にもっと知られるようになることは、私の長いあいだの念願であった、ということを実感した...」あるいは「この本が仲立ちとなって、ここから何かを得ようとするすべての人達に、私の経験と知識が役に立つ...」と述べています。確かにこの本は、彼の願い通り、正に版画に関する情報の玉手箱です。彼はなにも「秘密」にしませんから、ページを繰ると本の中に詰め込まれた情報の量にびっくりするばかりです。


それにしても吉田氏は、この本をどんな人に向けて書いたのでしょうか。道具を取り上げて版画を作り始める人が、世界中から出てくることを期待したのでしょうか。実際のところ、この本は外国での版画にはあまり影響を与えませんでした。時期が最悪の......1939年、そしてそれに続く何年かは日本と西洋の関係があまり良いとは言えないという時代だったからです。でも戦後、御子息の遠志さんが、日本の版画の知識を世界中に広めるという使命を受け継いだのです。遠志さんは「吉田スタジオ」という、ここに来れば誰でも版画が学べるような、そんな施設を開設しました。私も、ここで学ぶ恩恵に預かったひとりで、1986年の秋に数カ月間だけ実習をしました。もっと長いこと続ければ、大先輩の小松さんからもっとたくさんのことを学べたはずだったのに、軽率にも「自分ひとりで」やってみたいと思ってしまったのです。


こういった背景があるので、亡くなられた吉田氏に、私が彼のデザインを盗んだ、などと思われる心配はまるでしていません。彼は私が生まれる以前に亡くなっていますが、自分はきっと彼の生徒の中でも「優秀」なひとりだと自負しています。なぜなら、彼が熱心に追求した「木版画の知識を世界中に広める」という役割を、同じように実行しているからです。私は、誰でも自由に彼の本を読めるように、インターネットを使ってこの本を公開しています。実際、何百人もの人達がこの本の内容を学び取ろうとダウンロードをしています。


ここに、もうひとつ付け加えることがあります。この版画は、私が今まで作り慣れてきた浮世絵とはとても違っていますが、作業の間、手を取って導いてもらえたということです。吉田氏は、大変な手間と費用をかけて、この本の中に、版画を作るすべての工程を示す本物の版画を綴じ込みました。ですから、私は指示に従って、段階ごとに進んでいくだけでよかったのです。


吉田氏、御子息の遠志さん、そして現在一家の伝統を引き継いでおられる御孫さんの司さん、ありがとうございます。みなさんが寛大で快く知識を分けあってくださるお陰で、世界中のたくさんの人達がその恩恵に預かっています。私は、御一家の生み出した作品をより多くの人達が鑑賞できるよう、ほんの少しだけお役に立てたことをとても嬉しく思っております。


平成13年1月