鴛鴦
原画は今から200年以上も前に磯田湖龍齋が描いています。彼の筆で描かれた墨線を彫った版は原画とまるで同じですが、その後の色摺りを原画がたったの3色のところを20色使いました。ですから、この版画を全体として見ると20世紀前半の「新版画」風な雰囲気をもつように変化しているのです。湖龍齋がこのやり方を一体どう思うかは推測するしかありませんが、私はあまり気にかけていません。私はただ単にこの絵を復活させたかったのです。それも、当時の摺師には叶わなかったやりかたで...。
左上に「鴛鴦の 衾やさむき 契かな」と歌があります。日本で鴛鴦は仲の良い夫婦の象徴とされていて、つがいは一生涯連れ添うように言われていますが、現代の研究調査が示すところによると実情はそうでもないらしいのです。どうやら代りになる新しいシンボルを見つける必要がありそうです。これといって適当な代りはまだ思いつかないのですが...。