商品番号  0012
在庫  在庫あり
サイズ  16.00 x 21.80cm
6,480円
税別  6,000円

これは「北斎画譜」からの作品で、1849年に名古屋で出版されたものです。この絵本が現代に至ってもなお魅力を持ち続けている理由、私には分かる気がします。はるか遠い昔に画かれた興味深い絵の数々です。それにしても当時、この作品を見た名古屋の人達は、こういった本をどのように受け止めたのでしょうか。絵から昔を懐かしむなどということは、もちろんあり得なかったはずです。答えを求めるには、今日の私達の生活と当時の人々の暮らしの主な違いについて考えなければなりません。現代に生きる私達は、新聞、テレビ、雑誌、映画、本、壁にかけられた絵、などなど、映像や画像に一日中囲まれて暮しています。皆さんも私も、誰もが文字どおり幾百という「像」を毎日見ているのです。でも昔の人達は、こんな絵の「パレード」を常に目の当たりにするような暮しはしていませんでした。実際のところ、当時の人達が人為的に作られた絵を見るのは、極めてまれな事でしたから、人々が北斎の画いた情景に心引かれた気持が良く分かります。ちょうど、現代の私達が映画を見てその映像の中に引き込まれていくように。映画を見ている間は現実がどこかに消えて、私達は映像の中で描写される世界の一部となりますから。その感情がどんなに強いものであったのかは想像がつきませんが、当時のこういった本の人気から判断して、かなりのものだったでしょう。


当然の事ながら、こういった感覚を捉えることは、もう私達にはできません。洞穴のなかに1年くらい閉じこもって、映像の洪水からのがれでもすれば、別ですが。きっとそういった時にだけ、この絵を本来あるべき状態で見る事ができるのでしょう... 視線が左下の隅にある小道に行きます。一歩一歩導かれて村をジグザグに進んで行き、田舎道を通り抜けていきます。そして最後には、背景にある富士山の、絵には見えない頂上に辿り着くのです。


紙の上に絵の具を散らばせただけの物。それが実際、別世界への入り口となるのです。1849年の人達には、それが可能でした。皆さんも、この絵の世界に誘い込まれるといいのですが!