商品番号  0260
在庫  在庫あり
サイズ  16.50 x 22.50cm
8,640円
税別  8,000円

この岳亭春信作の絵は、初めて目にした時からずうっと復刻の機会を待っていました。1820年頃に描かれた作品にもかかわらず現代的な雰囲気があり、私はこの絵の抽象的なところが気に入っています。狂歌仲間が注文して作らせた作品であることはまず間違いなく、またこの3つの歌の中に岳亭の狂歌号「神歌堂」が入っていることから、彼がこの中のひとりであるこも確実です


 

   とりかなく あつまの海に をかむらん

    つくしの春に しらぬ日の出を


   明ほのゝ こかねのからす のほるとき

    ひかりとひちる 浪のしら玉


   彼経に いはくありその 浪の花

    ひらけて天か 下の春そと


この絵から現代的な印象を受ける要因のひとつに、墨版を用いていないという事実があります。伝統的木版画の場合は、まず墨で輪郭を画いてからそれを版木に写して彫る、というのが普通です。摺る時はこの墨版が最初ですから、その後で輪郭の内側に色を摺り入れていく作業は比較的楽になります。ところが、このように、違う色との境界になる黒い線のない場合には、彫るのも摺るのもはるかに難しくなるのです。伝統的な版画には輪郭があるために、色版を摺るときには多少のずれを許容する余地があります。見当がほんの少しずれても黒い線が隠してくれるからです。ところが、このように境界線のない場合は隠しようがありません。


ブル・デービッド 平成14年4月