手品
今回、新たに商品カタログに追加される作品は、毎年、木版館の作品のファンやコレクターの皆様に贈呈される年賀状として作られたのが始まりです。2016年が終わりに近づき、次の年の年賀状に最も相応しいデザインを考えていると、スタッフの一人から今年は葛飾北斎の絵にしたらどうかと提案がありました。私達はどうしても恩人である北斎へ敬意を表したかったのです。
浅草の店の開店準備をしている時、予算が非常に厳しい状態にありました。そんな時、北斎の最大の代表作である『神奈川沖浪裏』の復刻版の浮世絵を販売し、お客様から大好評を得たお陰で、困難な時期を乗り越えらるだけの充分な資金を調達することができたのです。そのお礼参りとして、スタッフからの強い勧めもあり、私は浅草のお店からわずか数分の所にある北斎のお墓を訪ね、お供え物と共に感謝の想いを伝えました。
しかし、北斎の恩に報いるにはそれだけでは足りないと思い、北斎漫画の本を何気なくめくっていると、今回の作品になる江戸時代の芸人の絵を発見し、2017年の年賀状にする事に決めたのです。
この北斎漫画の原画は実際には淡く控えめな色彩で描かれていますが、私達の作品はもっと魅力的に見えるように少しアレンジを加えました。特に熟練の手品師が水鉄砲の芸で作り出した大波のような水しぶきが、より鮮明に際立つような色合いで仕上げました。それにしても、実際にこんな芸ができる人がいると思いますか?